2016年11月1日より社長に就任した山本哲司社長は、前・社長の「新事業の研究開発とひとづくりに取り組む」という意思を引き継ぎ、創業50周年の節目から、新たな50年目への舵取りを行います。
その決意や想いについて伺いました。
1966年の創業時から、豊川で国内外に向けた歯車の開発・製造を行ってきました。現在多くの歯車が使われている自動車産業は、ガソリン車から電気自動車へ大きく流れが変化しています。私たちもその流れに合わせ、時代をにあった歯車を世に送り出すことが歯車専門企業としての役目です。その新たな一手として、今後主要産業となりうるロボット分野など次世代産業への参入を視野に入れた新事業の研究開発を進めています。中日精工には50年間の技術の蓄積があり、これを使って新たなものを生み出すのは「人」です。研究開発と同時に、「ひとづくり」にも力を入れていきます。
以前の会社で教えていただいたことなのですが、経営を電車に例えると2つあります。1つは機関車型で、1つの電車(経営者)がどんどん社員を引っ張って進んでいくタイプ。もう一つは各車両に駆動がついている新幹線型で、車両が自立しつつ連結して、同じ方向に向かって進んでいきます。
時代の移り変わりのスピードは非常に早く、誰か一人が組織を引っ張っていくことは現実的ではなくなっています。中日精工も新幹線型の組織を目指し、それぞれの部署が自立して連結し、同じ方向を向いて進んでいく「新幹線型の組織」を目指します。
そのためには、部課長たちは権限を持ってもらい、どんどん意思決定を任せていくようにします。自分で考えて仕事を進めていくと、組織が自立し活性化すると思うからです。だからといって丸投げにはせず、見守り、必要なときだけ助言を行うようにします。
また、彼らには会社の損益計算書や貸借対照表を全部見せ、経営指標を元に議論できるようにしています。
ものづくりの会社なので、つい技術だけを追いがちになる。しかし、幹部ともなれば経営に欠かせない経営指標を知った上で、今会社に必要なことは何か、数字を根拠に話し合えることが大切です。
経営指標という共通の情報を持って議論することが、ぶれることなく1つの方向に向かって進む組織につながるのではないかと思っています。
幹部だけでなく、一般社員に対する教育も力を入れていきます。中日精工は、毎年高校を卒業したばかりの新卒社員がたくさん入社します。
学校は3年間で卒業しますが、会社に入ればこの先何十年とある。社会に出たばかりの彼らに誰が社会人としてのモラルや、「人としてどうあるべきか」を教えてやれるか。それは会社の責任ではないでしょうか。私は彼らと向き合って、それをじっくり伝えていきます。
この先、何かのきっかけで人として踏み外すことがあるかもしれません。
しかし未然に彼らの異変に気付くことができれば、フォローできると思っています。
私は入社してから、毎朝6時前に出勤し、ひとりひとり社員に声をかけています。毎日続けると、仕草や行為の違和感に気づくようになるんです。何か悩みがあるのかと聞くと、「誰にも言っていないのに、どうしてわかったんですか」と驚かれることもあるほど。
こうしたコミュニケーションをコツコツ続けて、「いつでも誰かが見ている」という安心感と緊張感を持ってもらいたい。その意識を持つだけでも、人としてどう振る舞うべきか考えられるようになるはずです。
私は、ひとづくりも歯車に似ていると思います。社員との距離感を歯車の噛み合いに例えると、経営者が入り込みすぎても回り方がギクシャクするし、離れすぎても機能しない。人も歯車もスムーズに回る距離があるんです。それはひとりひとり違うので、それぞれにあわせたアプローチが必要になる。これは売上などの成果に直結するものではないので、どうしても優先順位が下がってしまいがちです。しかも外部に任せることもできないので、誰かがやらなければならない。だからこそ私が、率先してやり続けることが大事だと思うのです。
ビジネスの基本は人。
人が育てば組織も育ち、
世界中で信頼される歯車企業になれる。
そう信じて愚直に
社員とともに、挑戦していきます。